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投稿者: CANPAN運営事務局

【ソトコト】地球温暖化に勝つ、「心技体」。 (2008年5月号)(2008年5月26日)

ソトコト(2008年5月号)
ソトコト(2008年5月号)
中国双璧都市に環境試験的旅行!いま、このモンストラスな国家に何が起こっているのか?テレビや新聞の情報からは読み取れない、本当の胎動を感じたくて旅に出た。
中国双璧都市に環境試験的旅行!いま、このモンストラスな国家に何が起こっているのか?テレビや新聞の情報からは読み取れない、本当の胎動を感じたくて旅に出た。
地球温暖化に勝つ、「心技体」。
(独)国立環境研究所 地球環境研究センター
温暖化リスク評価研究室長
江守正多


【ソトコト】(2008年5月号)


日本庭園は四季を楽しむ草花を植え、海や湖沼を表すために池を設け、山の代わりに石を配する。小さな世界は、大きな世界の縮図でもある。庭園は日本の思想や芸術文化に、大きな影響を与えた。現在、コンピューター上に、地球と同じ気候をつくる「地球シミュレータ」が温暖化研究において、重要な役割を担っている。そのデータが大きな力となり、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書が作られ、IPCCはアル・ゴアとともに2007年度のノーベル平和賞を受賞した。

コンピューター上の地球では雨が降り、砂漠は乾燥し、雲や台風も現れる。現実の地球と同じようなことが起こる。温暖化の研究を行う江守さんは地球シミュレータを用い、私たちにより具体的な未来の地球を示してくれる。いわば、地球温暖化社会をガイドしてくれる道先案内人だ。

「いくらコンピューターで計算しても、まだどっちに振れるかわからない部分もある。たとえば、雲がどれくらいの確率で雨に変わるかなどは経験的な要素が必要です。シミュレーションと実際に観測された結果を照らしあわせ、より現実に近い地球をコンピューター上につくることが重要です。最近、温暖化問題が人々の話題に上がることが増えてきました。しかし、書店では『大げさに不安をあおる』か『温暖化は嘘だ』というような、両極端な書籍が並び、情報が錯綜しています。各人が正確な行動をするためには、なるべく正確な情報を持つ必要があると思っています」
日本が地球シミュレータで貢献したIPCCの報告書がノーベル平和賞を受賞したことで、温暖化問題が全世界規模の問題に一歩近づいた。江守さんはゴアの『不都合な真実』をどう見ているのだろう?

「IPCCの予測が政策決定者や市民に伝わるまでに大きなギャップがある。それを埋めるにはコミュニケーションの努力が要る。そういう点で『不都合な真実』は見習わなくてはいけないと思う。彼は概念を人々に伝えるときに、どこがネックになっているかを考え、ひとつひとつつぶしていった。それは今の僕に必要なことだと思う。

一方で大げさなところもあったという指摘もある。科学者としては100%客観でなくてはいけないと思うが、社会と関わる時点で、なんらかの価値と無関係ではいられない。映画で、多くの人が指摘しているのは海面上昇の話。ゴアはグリーンランドの氷が全部解けると、海面は6メートル上昇すると言い、直後にさまざまな都市が水没する映像が出てくる。実際は起きるとしても、数百年から1000年くらいかかるのではないかと考えられています。私自身も、温暖化予測の映像(http://team-6.jp/cc-sim/)を流す前に情報が一人歩きしないよう、科学者としての注意を促すようにしています」
最近は温暖化懐疑論の本がよく売れるのだという。なぜ「温暖化は嘘だ」という意見が一定の支持を得るのだろう。

「たしかに、温暖化の科学には不確実なところがあります。それが、一般の人へのメッセージがつくられる過程で、あらゆる単純化がなされるわけです。特にメディアでは断定的、大げさに取り上げられ、人々の意思決定に影響する。そうするとそんな単純な話でいいのかという意見が出る。僕は、そういう意見があるのは良いことだと思います。ただ、反対意見もバランスの悪い言い方をする人が多いような気もします」
『創世記』の「ノアの方舟」ではないが、「洪水が40日40夜」続いた後では、手遅れになってしまう。地球に暮らす者にとって、今、どのような取り組みができるだろう。江守さんは意外にも「心技体で勝てる」という。しかし、科学者である江守さん。ただのマッチョな精神論ではなさそうだ。

「いままでと同じような生活をし、温室効果ガス排出量を2050年までに技術力だけを用いて半分に減らせるか? 減らせます。原発をいっぱい建てる。森林を全部刈り、エネルギー作物を植える。出てきたCO2は地中に埋める……。相当、無理のある世界です。だけど、心技体がそろえば、もっと無理なく温暖化に勝てると考えています。心は価値観やライフスタイル。技は省エネ技術や新エネ技術。体は体系、つまり社会システムや社会インフラ。この3つが必要だと思う。この考え、流行らせたいんですけど(笑)。あるテレビ番組で都内50世帯に、1か月間のCO2スリム化生活をしてもらいました。無駄なエネルギーを使わない生活です。結果、約40%の排出量が減りました。中には70%減った世帯もあった。私たちは無駄なエネルギーを結構使っているんですね。平気で電気やエアコンをつけっぱなしで出かける人たちがちょっと気をつけると、排出量は相当減ると思う」
脱温暖化に向かう社会とは、どんな社会なのだろう。そう尋ねると、江守さんは明確な答えを持っていた。

「『エネルギーを無駄に使う自由』が制限された社会をイメージします。経済的な仕組みを設け、エネルギーをたくさん使い、CO2をたくさん出したいのであれば、お金を払って出してくださいということです。世の中ではすベての自由が許されているわけじゃない。人に危害を加える自由は制限されているのですから。

温暖化で平均気温がたとえば2度上がると、結構大変な世界なんです。温暖化と関係なく、いわゆる猛暑の年と冷夏の年というのがありますね。猛暑の年は平年に比べてどれぐらい暑いかと言うと、夏の平均気温にすると1度くらいです。反対に冷夏というのは、平年より1度ぐらい涼しい。つまり、2度平均気温が上がると、冷夏になっても今の猛暑と同じぐらい暑い。想像してください。相当暑い世界ですよね。私たち科学者はいろんな観点を混ぜながら、大げさにならぬよう、安心させ過ぎないように伝える必要があります。世界は今後どうなるか。その材料をもっとお見せして、皆さんに判断、行動してもらわなくてはなりません。私たちの将来は、私たちがどういう社会をつくっていくかによって変わっていくのです」

1970年、神楽川県生まれ。
東京大学総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。
97年より国立環境研究所に勤務。2006年より現職。
海洋研究開発機構地球環境フロンティア研究センターグループリーダー。
東京大学気候システム研究センター客員准教授。
専門は気象学、特にコンピューターシミュレーションによる地球温暖化の将来予測。共著書に『NHKスペシャル気候大異変―地球シミュレータの警告』(日本放送出版協会)がある。



ソトコト・・・ロハスピープルのための快適生活マガジン。 
●「SOTOKOTO」は、アフリカのバンツ一族の言葉で「木の下」のこと。「木の下には叡智が宿る」という意味を込めて誌名としました。ソトコトは完全リサイクルマガジン。再生紙とエコインクを全面使用し、表紙は環境に優しく再生可能な「TECHNOF」加工です。


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