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【 スポットライト 】
投稿者: CANPAN運営事務局
【ソトコト】コミュニティ・ガーデン(2008年5月号)(2008年5月12日)

- ソトコト(2008年5月号)

- 中国双璧都市に環境試験的旅行!いま、このモンストラスな国家に何が起こっているのか?テレビや新聞の情報からは読み取れない、本当の胎動を感じたくて旅に出た。
自分たちの地域のために花を植え、野菜を育てる
コミュニティ・ガーデン
【ソトコト】(2008年5月号)
土をいじり、花を育て、野菜を収穫する。
子供から大人まで、どんな人も楽しめるのがガーデニング。
それなら、ひとりでやっているよりも、地域のさまざまな人たちと一緒にやったほうが、より楽しく、より意味のあることができるのではないだろうか?
グリーンを介した人づくり、地域づくりの場である「コミュニティ・ガーデン」の事例を、ジャーナリストの大塚敦子さんが、イギリスとアメリカからレポートしてくれた。
「コミュニティ・ガーデン」。最近日本でもちらほら聞かれるようになった言葉だが、どんなガーデンをイメージすればいいのだろう。市民農園なら身近にたくさんあるけれど、コミュニティ・ガーデンはそれとどう違うのか?
多様な人たちを包み込むイギリスのコミュニティ・ガーデン
まずは、コミュニティ・ガーデンの先進国イギリスの取り組みを見てみよう。イギリスでは1970年代からコミュニティ・ガーデンづくりが盛んになり、ロンドンだけでも50以上のガーデンがある。
ロンドンの中心部からさほど遠くないイーリントン地区のカルペッパー・コミュニティ・ガーデンは、地下鉄の駅から徒歩数分の賑やかなエリアにある。が、一歩ガーデンに足を踏み入れると、そこは心洗われるような静けさと緑が広がる別世界だ。
このガーデンの設立は82年。2つの学校が協力し、近所の空き地に子どもたちの園芸や環境学習のためのガーデンをつくろうとしたのが始まりだった。そのプロジェクトはやがて地域の住民を引きつけ、行政からの助成金も出て、コミュニティ・ガーデンとなった。
現在のガーデンには50の区画があり、会員数は150人。運営主体は地域住民による管理委員会と、委員会に雇用されているコーディネーターだ。近隣住民や子どもたちのほかに、耳が不自由だったり、精神・知的障害があったり、癌などで長期闘病中だったりする人々がコミュニティ・グループとして参加している。「プロジェクト16」といって、学校をドロップアウトした青少年のための園芸プログラムも行っている。
自分の区画の耕作が中心で、全体との関わりが希薄になりがちな市民農園とは違い、コミュニティ・ガーデンは、地域の人びと自身がよりよい地域づくりをめざして運営しているのが特徴だ。気の合う仲間や似た者同士だけが集まるのではなく、前述のような多様な人々を受け入れる懐の深いスペースでもある。
実際、カルペッパー・ガーデンには何ともいえない包容力がある。いつふらりと立ち寄っても、誰かが庭から摘みたてのハーブでお茶をいれていたり、老若男女が輪になって談笑していたり。ガーデンがなければ、毎日駅と家を往復するだけで、出会うことも会話することもなかったであろう人々の間に、ゆるやかで温かな絆が生まれている。
年齢も生活様式も階層も違っても、それぞれが帰属意識を持てるカルペッパー・ガーデンは、とてもインクルーシブな(すべての人を包括する)空間だ。そしてそれこそが、イギリスのコミュニティ・ガーデンのめざすところなのである。
人々をつなぐコミュニティ・ガーデン。
安心で安全な食をめざすアメリカのコミュニティ・ガーデン
さて、次はアメリカのコミュニティ・ガーデンを紹介しよう。イギリスのガーデンが教育や福祉に重点を置いているのに対し、アメリカの多くのガーデンは「食の確保」を重視しているところに特徴がある。貧富の差が激しく、国内に多くの貧困層を抱えているアメリカならでは、とも言える。
北西海岸のワシントン州にある人口20万の中規模都市タコマ。街のダウンタウンに近いヒルトップ地区には、「グアダルーペ・ガーデンズ」と呼ばれる7つのコミュニティ・ガーデンがあり、ホームレス・シェルターなどに野菜を提供している。96年、「カソリック・ワーカーズ」という団体が中心となり、ゴミ捨て場や麻薬常習者たちのたまり場と化していた空地を片づけてつくったガーデンだ。
グアダルーペ・ガーデンズの3つの柱は、(1)オーガニック、(2)地域の再生、(3)持続可能性、である。そのコンセプトに基づいてサポートグループをつくり、CSA(Community Supported Agriculture=自分の支援する畑の収穫物を直接買う)を始めて以来、新鮮なオーガニック野菜を買いにくるミドルクラスの人たち、畑仕事を手伝いにくるボランティアの学生たちなど、地域の外からさまざまな人たちが往来するようになり、荒れていた地域の雰囲気がずいぶん変わったという。
ガーデンは多くの人の心も癒してきた。一言も言葉を話さなかった元ホームレスの男性は、畑仕事を手伝い始めてから人と会話できるようになった。今はガーデンが彼の居場所だ。
このガーデン、地域の再生に大きく貢献したにもかかわらず、土地の保全には苦労した。2000年、それまで空地を放任していた不在地主がガーデンのひとつを売り、駐車場にしてしまったのである。続いて生産の中心だった大きな庭も売りに出されたが、「カソリック・ワーカーズ」に買い取る資金力はない。そこで、低所得者向け住宅を供給するNPOとタイアップし、敷地内に住宅を建設するかわり、ガーデンを丸ごと保全するという計画を市当局に提案し、何とか危機を切り抜けることができた。現在は、市民有志がNPO「ランド・トラスト」を立ち上げ、ガーデンを保全している。
近年、ヒルトップ地区にはベトナムやロシアなどからの移民が流入し、住民構成はいっそう多様化してきた。女子刑務所を出所した人たちのためのハーフウェイハウスもできた。異なる人と人を結びつけるグアダルーペ・ガーデンズの存在価値はますます高まりそうだ。
日本でのコミュニティ・ガーデンの可能性
最後に、日本の状況はどうなっているのか、簡単に触れておきたい。イギリスやアメリカのような広がりにはほど遠いものの、コミュニティ・ガーデンのコンセプトを体現したガーデンは日本にも存在している。
その代表的なものは足立区の「六町エコプチテラス」。02年、つくばエクスプレスの建設に伴って生じた区画整理地を利用してつくられたこのガーデンは、キウイ棚によるヒートアイランド対策、エコ農園、ビオトープなどで循環型社会づくりに貢献し、高齢化の進む地域の人々の憩いの場となっている、区画整理地の暫定利用という不安定な立場だったため、残念ながら今年4月に閉鎖されることになったが、日本におけるコミュニティ・ガーデンの可能性を示した貴重な成功例と言える。
コミュニティ・ガーデンが日本に根づくためには、市民と行政がパートナーシップを組んで緑地の有効利用に取り組む仕組みづくり、ガーデンを運営するコーディネーターなどの人材養成など、さまざまな課題がある。だが、イギリスやアメリカの例が示すように、コミュニティ・ガーデンは、環境、教育、福祉、安全な食、まちづくりなど、私たちの社会が直面する諸問題への優れた処方箋となりうるものだ。
「自分のまちにコミュニティ・ガーデンがほしい」。そう考える人が一人でも増えていくことを願っている。
大塚敦子(おおつか・あつこ)●フォトジャーナリスト。パレスチナ民衆蜂起などの国際紛争報道を経て、現在は欧米を舞台に、人と自然や動物との絆、死と向きあう人々の生き方などのテーマに取り組む。畑をとおしたボスニアの平和構築や、自然を介在するアメリカの少年更生プログラムなどを取材中。『さよならエルマおばあさん』『野菜がかれらを育てた』など著書多数。http://atsukophoto.com
ソトコト・・・ロハスピープルのための快適生活マガジン。
●「SOTOKOTO」は、アフリカのバンツ一族の言葉で「木の下」のこと。「木の下には叡智が宿る」という意味を込めて誌名としました。ソトコトは完全リサイクルマガジン。再生紙とエコインクを全面使用し、表紙は環境に優しく再生可能な「TECHNOF」加工です。
【連絡先】
株式会社 木楽舎
〒104-0045 東京都中央区築地7-12-7 築地FTSビル5階
TEL:03-3524-9572
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E-Mail:kirakusha@sotokoto.net
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コミュニティ・ガーデン
【ソトコト】(2008年5月号)
土をいじり、花を育て、野菜を収穫する。
子供から大人まで、どんな人も楽しめるのがガーデニング。
それなら、ひとりでやっているよりも、地域のさまざまな人たちと一緒にやったほうが、より楽しく、より意味のあることができるのではないだろうか?
グリーンを介した人づくり、地域づくりの場である「コミュニティ・ガーデン」の事例を、ジャーナリストの大塚敦子さんが、イギリスとアメリカからレポートしてくれた。
「コミュニティ・ガーデン」。最近日本でもちらほら聞かれるようになった言葉だが、どんなガーデンをイメージすればいいのだろう。市民農園なら身近にたくさんあるけれど、コミュニティ・ガーデンはそれとどう違うのか?
多様な人たちを包み込むイギリスのコミュニティ・ガーデン
まずは、コミュニティ・ガーデンの先進国イギリスの取り組みを見てみよう。イギリスでは1970年代からコミュニティ・ガーデンづくりが盛んになり、ロンドンだけでも50以上のガーデンがある。
ロンドンの中心部からさほど遠くないイーリントン地区のカルペッパー・コミュニティ・ガーデンは、地下鉄の駅から徒歩数分の賑やかなエリアにある。が、一歩ガーデンに足を踏み入れると、そこは心洗われるような静けさと緑が広がる別世界だ。
このガーデンの設立は82年。2つの学校が協力し、近所の空き地に子どもたちの園芸や環境学習のためのガーデンをつくろうとしたのが始まりだった。そのプロジェクトはやがて地域の住民を引きつけ、行政からの助成金も出て、コミュニティ・ガーデンとなった。
現在のガーデンには50の区画があり、会員数は150人。運営主体は地域住民による管理委員会と、委員会に雇用されているコーディネーターだ。近隣住民や子どもたちのほかに、耳が不自由だったり、精神・知的障害があったり、癌などで長期闘病中だったりする人々がコミュニティ・グループとして参加している。「プロジェクト16」といって、学校をドロップアウトした青少年のための園芸プログラムも行っている。
自分の区画の耕作が中心で、全体との関わりが希薄になりがちな市民農園とは違い、コミュニティ・ガーデンは、地域の人びと自身がよりよい地域づくりをめざして運営しているのが特徴だ。気の合う仲間や似た者同士だけが集まるのではなく、前述のような多様な人々を受け入れる懐の深いスペースでもある。
実際、カルペッパー・ガーデンには何ともいえない包容力がある。いつふらりと立ち寄っても、誰かが庭から摘みたてのハーブでお茶をいれていたり、老若男女が輪になって談笑していたり。ガーデンがなければ、毎日駅と家を往復するだけで、出会うことも会話することもなかったであろう人々の間に、ゆるやかで温かな絆が生まれている。
年齢も生活様式も階層も違っても、それぞれが帰属意識を持てるカルペッパー・ガーデンは、とてもインクルーシブな(すべての人を包括する)空間だ。そしてそれこそが、イギリスのコミュニティ・ガーデンのめざすところなのである。
人々をつなぐコミュニティ・ガーデン。
安心で安全な食をめざすアメリカのコミュニティ・ガーデン
さて、次はアメリカのコミュニティ・ガーデンを紹介しよう。イギリスのガーデンが教育や福祉に重点を置いているのに対し、アメリカの多くのガーデンは「食の確保」を重視しているところに特徴がある。貧富の差が激しく、国内に多くの貧困層を抱えているアメリカならでは、とも言える。
北西海岸のワシントン州にある人口20万の中規模都市タコマ。街のダウンタウンに近いヒルトップ地区には、「グアダルーペ・ガーデンズ」と呼ばれる7つのコミュニティ・ガーデンがあり、ホームレス・シェルターなどに野菜を提供している。96年、「カソリック・ワーカーズ」という団体が中心となり、ゴミ捨て場や麻薬常習者たちのたまり場と化していた空地を片づけてつくったガーデンだ。
グアダルーペ・ガーデンズの3つの柱は、(1)オーガニック、(2)地域の再生、(3)持続可能性、である。そのコンセプトに基づいてサポートグループをつくり、CSA(Community Supported Agriculture=自分の支援する畑の収穫物を直接買う)を始めて以来、新鮮なオーガニック野菜を買いにくるミドルクラスの人たち、畑仕事を手伝いにくるボランティアの学生たちなど、地域の外からさまざまな人たちが往来するようになり、荒れていた地域の雰囲気がずいぶん変わったという。
ガーデンは多くの人の心も癒してきた。一言も言葉を話さなかった元ホームレスの男性は、畑仕事を手伝い始めてから人と会話できるようになった。今はガーデンが彼の居場所だ。
このガーデン、地域の再生に大きく貢献したにもかかわらず、土地の保全には苦労した。2000年、それまで空地を放任していた不在地主がガーデンのひとつを売り、駐車場にしてしまったのである。続いて生産の中心だった大きな庭も売りに出されたが、「カソリック・ワーカーズ」に買い取る資金力はない。そこで、低所得者向け住宅を供給するNPOとタイアップし、敷地内に住宅を建設するかわり、ガーデンを丸ごと保全するという計画を市当局に提案し、何とか危機を切り抜けることができた。現在は、市民有志がNPO「ランド・トラスト」を立ち上げ、ガーデンを保全している。
近年、ヒルトップ地区にはベトナムやロシアなどからの移民が流入し、住民構成はいっそう多様化してきた。女子刑務所を出所した人たちのためのハーフウェイハウスもできた。異なる人と人を結びつけるグアダルーペ・ガーデンズの存在価値はますます高まりそうだ。
日本でのコミュニティ・ガーデンの可能性
最後に、日本の状況はどうなっているのか、簡単に触れておきたい。イギリスやアメリカのような広がりにはほど遠いものの、コミュニティ・ガーデンのコンセプトを体現したガーデンは日本にも存在している。
その代表的なものは足立区の「六町エコプチテラス」。02年、つくばエクスプレスの建設に伴って生じた区画整理地を利用してつくられたこのガーデンは、キウイ棚によるヒートアイランド対策、エコ農園、ビオトープなどで循環型社会づくりに貢献し、高齢化の進む地域の人々の憩いの場となっている、区画整理地の暫定利用という不安定な立場だったため、残念ながら今年4月に閉鎖されることになったが、日本におけるコミュニティ・ガーデンの可能性を示した貴重な成功例と言える。
コミュニティ・ガーデンが日本に根づくためには、市民と行政がパートナーシップを組んで緑地の有効利用に取り組む仕組みづくり、ガーデンを運営するコーディネーターなどの人材養成など、さまざまな課題がある。だが、イギリスやアメリカの例が示すように、コミュニティ・ガーデンは、環境、教育、福祉、安全な食、まちづくりなど、私たちの社会が直面する諸問題への優れた処方箋となりうるものだ。
「自分のまちにコミュニティ・ガーデンがほしい」。そう考える人が一人でも増えていくことを願っている。
大塚敦子(おおつか・あつこ)●フォトジャーナリスト。パレスチナ民衆蜂起などの国際紛争報道を経て、現在は欧米を舞台に、人と自然や動物との絆、死と向きあう人々の生き方などのテーマに取り組む。畑をとおしたボスニアの平和構築や、自然を介在するアメリカの少年更生プログラムなどを取材中。『さよならエルマおばあさん』『野菜がかれらを育てた』など著書多数。http://atsukophoto.com
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●「SOTOKOTO」は、アフリカのバンツ一族の言葉で「木の下」のこと。「木の下には叡智が宿る」という意味を込めて誌名としました。ソトコトは完全リサイクルマガジン。再生紙とエコインクを全面使用し、表紙は環境に優しく再生可能な「TECHNOF」加工です。
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