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投稿者: CANPAN運営事務局
【週刊読書人】不断に継続される対話 (2008年2月29日号)(2008年2月29日)

- 週刊読書人 (2008年2月29日号)
不断に継続される対話
理解し合うためのきっかけに
山中 速人
【週刊読書人】(2008年2月29日号)
RYOJI+砂川 秀樹編
カミングアウト・レターズ
子どもと親、生徒と教師の往復書簡
カムアウトということばは、響きのよいことばだ。秘密めいた「告白」でもなく、大上段に構えた「宣言」でもなく、ことばから醸し出される軽ろやかな雰囲気がいい。暗いところから明るいところにでるような、扉をあけて外の空気に触れるようなそんなすがすがしいおもむきがある。
本書によれば、このことばは、ゲイやレズビアンたちが仲間の集まるクラブやコミュニティにデビューする際に使われ出したのだという。それが現在のように、自分についての何事かを他者に公表するという行為一般を指すことばになった。私たちが普通に使うことばには、このようなマイノリティの生活や文化に由来することばが結構たくさんありそうだ。その事実を知ることによって、私たちの社会にマイノリティたちがもたらしてくれる果実の豊かさを感じ取ることができる。
本書には、カムアウトしたゲイ&レズビアンたちと、それを受け止めた家族や近親者たちの往復書簡がいくつも収められている。多くは、息子/娘と母親、教え子と教師の間に交わされた手紙である。実に、さまざまな状況があり、それぞれの手紙には、それぞれのカムアウトが直面しただろう決断と葛藤が込められている。手紙の多くは、カムアウトした後の当事者たちとその家族や近親者をめぐる気持ちのキャッチボールや思索の道程を振り返っている。カムアウトした側・された側が、それぞれカムアウトの過程をふりかえりながら、互いのよりどころを探り合うような文章が並んでいる。自分の子どもが同性愛者であることに驚きやとまどいを隠さない親もいる。一方、想像していたよりはるかにすんなりと受け入れた家族もある。周囲の差別や無理解と闘おうと手を携える家族もいる。これらの手紙を読むことで、読者は、当事者たちがたどった気持ちの変化や思索の道のりを追体験できるだろう。
自分の性的指向はプライベートなことであり、そもそも性的指向などを他人に明かす必要などないという意見に対して、本書の編者は、こう反論している。じつは性的指向は世の中ではけっしてプライベートなものとして扱われていない。その証拠に「結婚しているの?」とか、その人が男性だったら「彼女いるの?」とか、異性愛という性的指向にもとづいた関係をいつもチェックしているじゃないですかと。だから、ゲイやレズビアンたちがカムアウトする背景には、こういう異性愛偏重社会の生きにくさがあるのだろう。
しかし、カムアウトはゲイやレズビアンたちにとっては、ひとつの選択であって、けっして強いられる必要のないことであることも、本書は明白に指摘している。以前より緩和されているといっても、同性愛者に対する多数派の迫害や偏見はまだ色濃いからだ。しかし、そのような躊躇を超えてカムアウトすることによって、自分に対する尊厳の意識、仲間へ連帯、そして、異なった性的指向をもつ者への共感も強まる。だから、カムアウトするという行為だけが重要なのではなく、それによって、対話や理解の営みが不断に継続されることが大切なのだろう。
本書自体も、その不断に継続される対話のひとつなのだ。同性愛をめぐる当事者、彼/彼女を肉親にもつ家族、そして、彼/彼女らを取り囲むわたしたちのコミュニティにとって、それは差異を認めながらも理解し合うための大切なきっかけを与えてくれるに違いない。
これからカムアウトを考えている性的マイノリティにとって、また、彼/彼女たちから信頼をえてカムアウトを受ける立場に立つかもしれないあなたにとって、大切な指摘や考え方のよりどころが平易な表現で記されている。本書で初めて同性愛者について知る人たちは本当にラッキーだなと思う、本書はそんな一冊である。(やまなか・はやと氏=関西学院大学教授・社会学専攻)
★RYOJIはアクティビスト。ゲイ・リブの次世代として、ゲイ・アクトを模索。一九七三(昭和48)年生。
★すなかわ・ひでき氏は実践女子大学非常勤講師・文化人類学者。厚生労働省の研究班でゲイの性行動調査などを行なう。一九六六(昭和41)年生。
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理解し合うためのきっかけに
山中 速人
【週刊読書人】(2008年2月29日号)
RYOJI+砂川 秀樹編
カミングアウト・レターズ
子どもと親、生徒と教師の往復書簡
カムアウトということばは、響きのよいことばだ。秘密めいた「告白」でもなく、大上段に構えた「宣言」でもなく、ことばから醸し出される軽ろやかな雰囲気がいい。暗いところから明るいところにでるような、扉をあけて外の空気に触れるようなそんなすがすがしいおもむきがある。
本書によれば、このことばは、ゲイやレズビアンたちが仲間の集まるクラブやコミュニティにデビューする際に使われ出したのだという。それが現在のように、自分についての何事かを他者に公表するという行為一般を指すことばになった。私たちが普通に使うことばには、このようなマイノリティの生活や文化に由来することばが結構たくさんありそうだ。その事実を知ることによって、私たちの社会にマイノリティたちがもたらしてくれる果実の豊かさを感じ取ることができる。
本書には、カムアウトしたゲイ&レズビアンたちと、それを受け止めた家族や近親者たちの往復書簡がいくつも収められている。多くは、息子/娘と母親、教え子と教師の間に交わされた手紙である。実に、さまざまな状況があり、それぞれの手紙には、それぞれのカムアウトが直面しただろう決断と葛藤が込められている。手紙の多くは、カムアウトした後の当事者たちとその家族や近親者をめぐる気持ちのキャッチボールや思索の道程を振り返っている。カムアウトした側・された側が、それぞれカムアウトの過程をふりかえりながら、互いのよりどころを探り合うような文章が並んでいる。自分の子どもが同性愛者であることに驚きやとまどいを隠さない親もいる。一方、想像していたよりはるかにすんなりと受け入れた家族もある。周囲の差別や無理解と闘おうと手を携える家族もいる。これらの手紙を読むことで、読者は、当事者たちがたどった気持ちの変化や思索の道のりを追体験できるだろう。
自分の性的指向はプライベートなことであり、そもそも性的指向などを他人に明かす必要などないという意見に対して、本書の編者は、こう反論している。じつは性的指向は世の中ではけっしてプライベートなものとして扱われていない。その証拠に「結婚しているの?」とか、その人が男性だったら「彼女いるの?」とか、異性愛という性的指向にもとづいた関係をいつもチェックしているじゃないですかと。だから、ゲイやレズビアンたちがカムアウトする背景には、こういう異性愛偏重社会の生きにくさがあるのだろう。
しかし、カムアウトはゲイやレズビアンたちにとっては、ひとつの選択であって、けっして強いられる必要のないことであることも、本書は明白に指摘している。以前より緩和されているといっても、同性愛者に対する多数派の迫害や偏見はまだ色濃いからだ。しかし、そのような躊躇を超えてカムアウトすることによって、自分に対する尊厳の意識、仲間へ連帯、そして、異なった性的指向をもつ者への共感も強まる。だから、カムアウトするという行為だけが重要なのではなく、それによって、対話や理解の営みが不断に継続されることが大切なのだろう。
本書自体も、その不断に継続される対話のひとつなのだ。同性愛をめぐる当事者、彼/彼女を肉親にもつ家族、そして、彼/彼女らを取り囲むわたしたちのコミュニティにとって、それは差異を認めながらも理解し合うための大切なきっかけを与えてくれるに違いない。
これからカムアウトを考えている性的マイノリティにとって、また、彼/彼女たちから信頼をえてカムアウトを受ける立場に立つかもしれないあなたにとって、大切な指摘や考え方のよりどころが平易な表現で記されている。本書で初めて同性愛者について知る人たちは本当にラッキーだなと思う、本書はそんな一冊である。(やまなか・はやと氏=関西学院大学教授・社会学専攻)
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★すなかわ・ひでき氏は実践女子大学非常勤講師・文化人類学者。厚生労働省の研究班でゲイの性行動調査などを行なう。一九六六(昭和41)年生。
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