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投稿者: CANPAN運営事務局
【ソトコト】 アル・ゴア(アメリカ元副大統領)×福岡伸一(分子生物学者) (2007年3月号)(2007年2月19日)

- ソトコト(2007年3月号)

- 自己犠牲の精神、だなんて、もう古い。誰かを助けたり、何かを守ったり、どこかをよりよくしていくことは、とっても素直に、やりたいことの延長線上にあるんです。
アル・ゴア(アメリカ元副大統領)×福岡伸一(分子生物学者)
理想のエネルギー、
そして京都議定書にアメリカが復帰する方法
【ソトコト】(2007年3月号)
アメリカ元副大統領のアル・ゴア。地球温暖化の現実を世界中で説き、その軌跡を描くドキュメンタリー映画『不都合な真実』の大ヒットと、その日本語版著書の刊行で注目が集まるゴアに、ソトコト巻頭コラムニストの福岡伸一が地球の未来について聞く
福岡伸一(以下、福岡) お時間をありがとうございます。ソトコトの読者は必ずあなたの著書および映画を観るはずですので、ここではステレオタイプなQ&Aを排して、映画もしくは本で触れられていないいくつかの論点について質問させてください。
アル・ゴア(以下、ゴア) わかりました。でもひと言だけ“紋切り型”のコメントを入れておいてください。「すぐ、この本を買いに走ってください!」です(笑)。
福岡 あなたは映画および著書の中で、地球温暖化に対して私たちができることをいくつも提案されています。一方、次のような考え方があります。ハイブリッド車やバイオ燃料などはすべて当面の“つなぎ”の手段であり、究極的には水素経済(水素は燃やしても水と熱しか発生しない最もクリーンなエネルギー源であり、これを基盤とした経済構造をつくるべきであるという主張)が理想の未来像である。水素経済についてどう思われますか。
ゴア 水素については誤った情報が多く流れていると思います。かつては私も水素に執心していました。15年前のことです。しかし、現在では、水素は電気と同じカテゴリーとして理解されるべきだと主張する科学者がいます。エネルギー「源」ではなく、エネルギー媒体だと。つまり、電気と同様に、エネルギーをある状態からほかの状態に輸送する方法です。すべては水素を作る方法次第です。もしも石炭か石油を原料にして水素を作るとすれば、現在私たちが行っていることより、はるかに悪いことになります。水素が燃やされてエネルギーが使われるだけでなく、そもそも、“汚い”化石燃料から水素を抽出するのにエネルギーが使われることになるのですから。ブッシュ・チェイニー政権は野心的な水素エネルギー計画を企てていますが、これは実は二酸化炭素排出量を大幅に増やすことになり、望ましくない方向に向かうことになるのです。しかし、何らかの素晴らしい発明によって、無害な方法で水素を抽出することができるようになれば、そして、それを貯蔵媒体として使うことができるようになれば、それなりの役割が果たせるでしょう。ですが、水素が重要な役割を果たせるようになるかどうか、私は、今後20年間に関しては懐疑的です。
原発に対する姿勢
福岡 あなたが触れていないもう一つの問題は原発です。しばしば二酸化炭素削減のキャンペーンは、原発推進のキャンペーンと表裏一体の関係にあります。この点についてどのようにお考えですか。
ゴア 私は、闇雲な反原発論者ではありません。しかし非常に懐疑的ではあります。原発は限定的な役割は果たすでしょうが、あくまでも一要素にすぎないと思っています。なぜなら非常に高くつきますし、今のところ、原子炉は特大サイズのものしかありませんから、建設に時間もお金もかかるし、安全な操業も技術的に難しい。
たとえばフランスでは発電の大部分を原発が担っています。しかし、ほとんどの国では原発は選択されないでしょう。もしも世界全体が原発を選択すれば大問題になります。
私たちは情報処理能力が急激に加速する時代に生きています。これは、システムのリデザインを促進し、無駄と非効率性を劇的に減らせるということです。かつては100年、150年来の技術に基づいていたプロセスにおいて、今では電子・分子一つ一つまで追跡することができます。そして、世界経済全体が、より粒子レベルへ、細かい部分に注目する方向へと向かっています。
つまり、これから数十年は、効率性と環境保護、再生可能エネルギーが最も魅力的な節約・貯蓄方法であり続けるだろうということです。ですから、原子炉への投資は最小限にせよという圧力がかかるはずです。
アメリカが犯した能力の無駄遣い
福岡 京都議定書に米国が参加していないのは全く恥ずべきことだとあなたは語っていましたが、日本の私たちが米国に翻意を促すことができるとすればそれはどのようなことでしょうか。
ゴア アメリカの全同盟国が、アメリカへの友情を大胆に表すべきだと思います。ちょうど、個人間の友情において道を踏み外しそうな友に助言をするように。なぜなら、アメリカは京都議定書に加わるべきだから。
私たちアメリカ人は、世界にリーダーシップを示すというユニークな能力を持っています。自慢しているように聞こえたら申し訳ありませんが、より大きな権威という意味では、我が国にそのようにユニークなリーダーシップ能力があることは客観的事実なのです。それを無駄遣いしてしまった部分もあるわけですが、それでも依然大きな権威を有しています。ですから、責任ある行動をすることが特に重要になってくる。昨年11月の選挙で議会の舵取りに変化が起こりましたが、これは私たちが正しい方向を見据えた表れだと信じていますし、2008年の大統領選では、どちらの党が勝つにしても、京都議定書とその成功に対してはるかに前向きな大統領が誕生するものと思います。
アル・ゴアの映画『不都合な真実』のジャパン・プレミアを、有楽町朝日ホールで観た。舞台挨拶に立ったゴアは、地球温暖化の危機を訴えることが自分の使命(mission)だと言い切っていた。映画の中では、大気中の二酸化炭素濃度の増大が、かつて地球が全く経験してこなかった300ppmを超えるレベルに達しつつあることと、全地球レベルで起こっている異常現象との相関関係について、あらゆるデータを示しながらゴアは身を挺して語っている。また、いわゆる温暖化懐疑論者に対しても痛烈な反証が繰り広げられる。
私自身は、燃えんばかりのゴアのミッショナリーな姿は本当のものだとしても、やはりもう一つの熱い意志を感じざるを得なかった。2008年に向けて彼がどのように動くのか目が離せない。
Al Gore
アメリカ元副大続領。1976年米国下院議員に選出され、84年と90年、上院議員に選出される。93年1月20日、米国第45代副大統領に就任し、8年間、その職務を果たした。2000年の大続領選挙では、僅差で共和党候補のジョージ・W・ブッシュに敗れた。1992年のベストセラー「地球の掟――文明と環境のバランスを求めて」の著者。また、2007年1月、同タイトルの映面公開に合わせ、「不都合な真実」(ランダムハウス講談社刊)が刊行された。
ソトコト・・・ロハスピープルのための快適生活マガジン。
●「SOTOKOTO」は、アフリカのバンツ一族の言葉で「木の下」のこと。「木の下には叡智が宿る」という意味を込めて誌名としました。ソトコトは完全リサイクルマガジン。再生紙とエコインクを全面使用し、表紙は環境に優しく再生可能な「TECHNOF」加工です。
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