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投稿者: CANPAN運営事務局

【ソトコト】 伝統の森・再生計画とは (2007年2月号)(2007年1月29日)

ソトコト(2007年2月号)
ソトコト(2007年2月号)
“2.0”は、食べることをさらに知的に楽しむ新しい時代の象徴。食――それは僕たちのエンターテインメント(かつ教養講座☆)。今回は悩めるオトナに送る、おいしーい欲求のレベルアップ特集です。
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伝統の森・再生計画とは
カンボジアの伝統織物を復興させる。
それはコミュニティづくり、土づくり、森づくりへ。
クメール伝統織物研究所代表・森本喜久男さんの挑戦

【ソトコト】(2007年2月号)


ここは世界遺産のアンコール・ワットなどで知られるカンボジア。
気持ちよさそうに眠っているこの赤ちゃんは、やがて、世界に誇れる織物文化を受け継ぐ人になるかもしれません。

布は森の中で生まれる。
森の恵みなのです。


布は、体の一部として身にまとうもの。今、衣料品は量販店で買い、使い捨てるものになってしまったが、かつては綿や蚕を育て、糸を紡ぎ、一枚一枚、手で丁寧に織ったものを大切に着ていた。
「だから、布には命があり、身にまとうことで、体の一部になるという価値観があったのです」と、カンボジアで伝統の絹織物の復興に取り組む森本喜久男さんは言う。
森本さんは1996年、カンボジアでNGO「クメール伝統織物研究所」を設立、現在、伝統織物の復興と、かつて人びとの暮らしを包み込んでいた自然環境を取り戻すため、スタッフと共に「伝統の森・再生計画」に奔走している。活動資金の大半は、昔ながらの手法で熟練の織り手が織った絹織物などの売り上げで賄っている。
もともとカンボジアには、世界に誇れる、繊細な絣柄の絹織物文化があった。熱帯種の蚕が生み出す黄金色に輝く生糸。それを樹皮や虫の巣、植物などさまざまな自然素材で丁寧に何度も染め、模様をつくり、そして織っていく。1枚の布を織り上げるまで半年以上かかることもあるという。
そうやって織り上がったもののうち、宗教的な意味合いを持つピダンと呼ばれる絵絣の織物は、儀式の際に、お寺の壁や天井に飾られる。また、200以上のモチーフがあるといわれるサンポット・ホールは、緯絣(よこがすり)の腰布。そのモチーフは織り手の手から手へ、母から娘へと伝えられる。中には、結婚式に臨む新婦が新郎のために織る布もあるという。
しかし、そんな豊かな伝統も、1970年から二十数年間にも及んだ内戦で、断絶された。多くの人びとが殺され、亡くなり、自然環境も破壊された。染色に必要な虫を何代も育てていた樹齢100年になる木を、戦火で失った家の復興のために切ったり、生活に必要なお金を得るために売り払うようになってしまった。

生活の場というリアリティ

「5年後、10年後に見えてくる色もあるんですよ」。自然素材で染めた織物は、年月とともに風合いを増していく。森本さんは、かつてカンボジアの村々に原風景としてあった、人々と自然環境が見事に調和した暮らしについて語る。
「一枚の布をつくるということは、自然との関わりそのものなんです。かつてカンボジアの村には、生糸を生む蚕を育てるための桑の木があり、木綿を紡ぐ綿花の栽培も、そして糸を染めるために必要なラックカイガラムシが育つ木や藍もあった。それ以外にも、染織に使える植物があり、それらは村を構成する自然の一部としてそこにあったんです。布は森の中から生まれ、まさに森の恵みなんです」
2003年から始動した「伝統の森・再生計画」は、アンコール・ワット遺跡で有名なシェムリアップ郊外に土地を購入し、そんな布を織るための自然環境と、人々が暮らす生活の場をつくるという計画だ。
これまで何度か土地を買い足し、現在は22ヘクタールを研究所として所有する。この土地のおよそ半分を自然の森として再生し、残り半分で、作業所や居住区、野菜畑、桑畑、藍畑、綿花畑などをつくっていく予定だ。いい色を出す藍など、いい草木を育てるため、土づくりから開墾を始めている。
森本さんがこの計画を語るときに、しばしば口にするのは「リアリティ」という言葉。「私たちは今、ここに『生活の場』をつくりだそうとしています。一番大切なのは、研究所の大所帯が食っていけるということの『リアリティ』なんです」。
たんなる「自然保護」とは違う。かつてカンボジアにあった素晴らしい色と糸を再現し、それを生業として地元の人が暮らしていけることが、なにより大切だと考えている。
この「伝統の森」で森本さんが目指すのは、過去に存在していたカンボジアの絣の世界の復元であり、同時に世界トップレベルの品質の布づくりだ。これまで自然の草木を相手に染色に明け暮れ、織物の素材の宝庫である自然とつきあい、村人の伝統の知恵や経験からさまざまなことを学んできた。そしてたどりついた結論が、より積極的な「生きた森」の再生だった。「これは、人が自然と共生するための一つの未来モデルの構築になるのかもしれません」。

子連れ可の職場

研究所では、15歳から75歳まで、3世代がいっしょに仕事をしている。職場は「子連れ可」。母親のそばのハンモックで眠っている赤ん坊、学校から戻ってきた男の子が絣のくくりをするお母さんの横で宿題をやっていたりする光景は、ごく当たり前なのだという。
そんな中から生まれる布。森本さんは言う。「うちの布は、“薬”なんです。身にまとうと気持ちよくなる(笑)。これは、人や自然が持っているぬくもりなんだと思います」。


森本喜久男(もりもと・きくお)●1948年京都生まれ。
クメール伝統織物研究所代表、絹織物専門家。71年、京都で手描き友禅工房に弟子入りした後、75年に独立。83年、タイのラオス難民キャンプにある織物学校のボランティアとして訪タイしたのを機に農村の織物と出合う。95年、「ユネスコ・カンボジア手織物プロジェクト」のコンサルタントなどを経て、96年にクメール伝統織物研究所を設立。伝統織物の復活と農村の経済活性化に取り組む。その活動で、2004年度ロレックス賞を受賞。


★つづきは、「ソトコト」2007年2月号をご覧ください。


ソトコト・・・ロハスピープルのための快適生活マガジン。 
●「SOTOKOTO」は、アフリカのバンツ一族の言葉で「木の下」のこと。「木の下には叡智が宿る」という意味を込めて誌名としました。ソトコトは完全リサイクルマガジン。再生紙とエコインクを全面使用し、表紙は環境に優しく再生可能な「TECHNOF」加工です。


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