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投稿者: CANPAN運営事務局

【ソトコト】 サンシャルティエに響くハーディー・ガーディの音色 (2006年12月号)(2006年12月4日)

ソトコト(2006年12月号)
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◆ファッション大特集◆ロハス・スタイルブック2007
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サンシャルティエに響くハーディー・ガーディの音色
――フランスの小さな村がつくった、古楽器の祭典――

【ソトコト】(2006年12月号)


バスを降りると聴こえてくる楽器の音色と、陽気な歌声。響く足音も軽快なリズムを重ねる。パリから電車とバスで二時間半の小さな村、サンシャルティエで30年の歴史を持つヨーロッパの古楽器の祭典が行われることを知り、僕は大きな憧れを抱いてこのフェスティバルに参加した。


フランスに、年に一度、ヨーロッパ中の民族音楽や演奏家が集まる祭典があると聞きつけ、かねてからヨーロッパはもちろんいろいろな国の民族楽器が大好きな僕はフランス行きを決めた。失われつつある古楽が今も活気づいて存在しているという事実をこの目で確かめたい、そして人と土地と、音楽のコミュニケーションを感じたいと思ったのだ。
パリから約2時間ほど電車に揺られて着く街「シャトルー」から、さらに車で30分かかる小さな村、「サンシャルティエ」にて行われる、その名も「サンシャルティエ・フェスティバル」。
サンシャルティエ村はとても小さく、大きな建物は、フェスティバルの中心となっている古城だけ。民家は、昔ながらの一軒家が多く、風合いの良い建物が並ぶ。
会場に向かう道の途中、いたるところから音楽が聞こえ、その上に行きかう人々の歌、会話、足音がミックスされる。
古城を中心とした、会場の周りには、フェスのチケットを買わずに、路上での演奏や、聞こえてくる音色に合わせて、お酒を飲みながらダンスをする人々で溢れていた。会場の中には、ライブ会場のほかに、ヨーロッパ中の古楽器や民族楽器を売る店が立ち並ぶ。売っているのは、ほとんどが楽器を作った職人たちだ。
バグパイプ、ハーディ・ガーディ、ニッケルハルパ、チター、リード楽器……音楽が流れる広場に並ぶ楽器たちが、どんなお店で見るよりも、いきいきとしている。
ふと気になった店でバグパイプを手にとり演奏してみる。しかし、音が出ない。職人のおじさんが、奥からニヤニヤしながら、ゆっくりと出てきて楽器の持ち方から順を追って教えてくれる。「いいかい? この指はここで、これは脇に挟んで……そら、思いっきり吹いて!」。やっと出た音はヘニャヘニャだったが、その瞬間、おじさんが、楽しそうに噴き出して、僕も笑った。こうして、楽器を作る職人たちと、コミュニケーションが図れるのは、このフェスのすばらしく楽しいところだろう。

夜には生演奏の音楽に合わせて、大人も子どもも一晩中踊り続ける

ヨーロッパのカラッとした暑さで知らず知らずのうちに消耗していた体力を回復しようと、手作りのラベルが可愛いアップルジュースを木陰で飲む。すると、すぐ後ろで美しい音色が聞こえてきた。そっと振り向くと大きな男性が優しくアイリッシュハープを奏でている。しばらく聴き入っていると、隣で休んでいた家族がハープに合わせて演奏に加わり、6人編成の素朴な音楽隊になる。つられて来た若者がその音楽に合わせて、自然と踊りだす。こんな風に、音楽を通して人が集まる文化はその場にいるだけで心地よい。
フェスの会場は、夜になると門が閉まってしまうが、その代わりに城の裏側に造られた板張りのダンスステージがにぎやかになる。ヨーロッパの夏は、21時ごろまで明るいが、路上ステージが盛り上がる頃にはすっかり日が暮れていて、舞台を照らすライトがオレンジ色に広がる。子どもから老人まで、日付が変わってもずっと踊り続ける。昼間は店頭で少しかしこまっていたハーディ・ガーディも、この時ばかりは大声を上げてリズミカルなドローンを奏でる。最初は見ているだけだったが、自然と体が動き、みんなの輪の中に入って、見よう見まねで踊った。

地元の協力を得た人と人とのつながりが強い音楽フェスティバル

最終日、このフェスのオーガナイザーである、guillaume taillebourgさんと話をさせてもらった。このフェスティバルは、30年以上も続くもので、初めは小さな村のお祭りだったが、一時期は何万人も訪れる巨大なものになり、現在は少し落ち着いて、約5000人の来訪者で安定しているという。小さな規模でやっているときのほうがよかったという人もいるようだが、そんな中で、人と人とのトラブルや、マナーの悪さなど、まったく見かけなかったのは、音楽の力と、主催者の努力が大きいだろう。
地元との連携を強くし、たくさんのスタッフを導入。トイレを有料化にしたり、ゴミは、随時清掃員が見回ったり。会場内では子どものプレイスペースと担当のスタッフを用意するなど、さまざまな配慮が見受けられた。
地元住民は、このフェスのためにわざわざ自宅を宿泊施設として貸したり、自宅の前で、食べ物を売ったり、うるさければ、フェスの3日間は外出する。このような、地域の準備や協力があってこそ地に足の着いたフェスとして続いているのだと思う。
「このフェスティバルが、一年の最大の楽しみ!」という感覚ではなく、「サンシャルティエ・フェスティバル」は、日々の暮らしを楽しむ人が集まっている印象を受けた。それは来場者のマナーのよさや、楽器職人の親切なふるまいから感じた。僕がチターを手に入れた店の主人も、「弦が切れたり、困ったことがあったら連絡して」とカードをくれた。彼が弾いた練習用のCDもくれたので、聴いてみたら、あんまり上手じゃなくて、でもそれがうれしくて何度も聴いた。このフェスでは、音楽だけではなく人と人とのコミュニケーションが加わるため、訪れた者の気持ちを豊かにし、フェスが終わったその後も体にしみこみ、ずっと続いていくものになる。
僕もチターを新しい曲に取り入れたり、子どもたちに聴かせたりと、毎日あの日々がつながっている。

齋藤紘良(さいとう・こうりょう)1980年生まれ。作曲家。Saturday Evening Postのチェロ&ヴォーカルとしても活動中。アルバム『IT'S ALL TRUE』が11/5発売。町田自然幼稚園の事務長も務める。http://www.saitocno.com/


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●「SOTOKOTO」は、アフリカのバンツ一族の言葉で「木の下」のこと。「木の下には叡智が宿る」という意味を込めて誌名としました。ソトコトは完全リサイクルマガジン。再生紙とエコインクを全面使用し、表紙は環境に優しく再生可能な「TECHNOF」加工です。


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