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投稿者: CANPAN運営事務局

【ソトコト】 未来世紀型ロハス美術館。 (2006年9月号)(2006年8月14日)

ソトコト(2006年9月号)
ソトコト(2006年9月号)
ロハス・ミュージアム・ガイド
ロハス・ミュージアム・ガイド
未来世紀型ロハス美術館。
【ソトコト】(2006年9月号)


“文化とは対話から生まれるもの――”。
欧州以外の少数民族に光を当てたミュージアムがここ。
ケ・ブランリ美術館は、もうとにかく画期的でした!


2万5000平方メートルもの広大な敷地に突如として現れた巨大な建物。赤、黄、茶色とカラフルな不思議な“箱”。一体その中には何が入っているんだろう? 周りには178種類もの木や植物が植えられている。エコロジカルでエスニックなロハスな空間。そう、パリにまたひとつ新名所が誕生した。アフリカ、アメリカ、アジア、オセアニア文明が主役というユニークな「ケ・ブランリ美術館」だ。自由・博愛精神にのっとって世界中から集まった人たちに対して、フランスはもうそろそろオマージュを捧げてもいいんじゃないか。
エスカルゴのようなシェイプを描く建物から中に入ると、天井まで届く円筒形のガラスのショーケースには9000台もの楽器が収納されているのが見える。その前を通ると民族音楽がどこからともなく聞こえてくる。アボリジニのパワフルな点描画やアフリカのマスク、中国の民族衣装……。映像と音をふんだんに使った立体的な展示。そのどれもがエスニック文化をわかりやすく伝えてくれる。緩やかなカーブを描くランプを伝って2階へ上がると、薄暗くライトアップされた展示会場は、まるで文化のアミューズメントパークさながらだ。
ケ・ブランリが所有する30万点ものコレクションは9割がフランス国立人類博物館とアフリカ・オセアニア美術館から運ばれてきたもので、その多くは損傷が激しく、中には虫が喰っているものもたくさんあった。そんな膨大なコレクションがひとつひとつ修復され、3Dでデジタルデータ化されていった。その鍛え上げられたプロ集団によるハイテク技術の結晶は、サイトを通じて刻一刻と現在進行形で克明に全世界中に発信され続けてきた。ジャン・ヌーヴェルが手掛ける建築現場も、工事の様子が手にとるように検索できる。
まさに、美術館が出来上がるまでのプロセスまでもが、ひとつの作品のように展示されるという新しい試みだ。
そんな方法を提案したのはフランスのギャラリー・システム社。ケ・ブランリのために「TMS」(The Museum System)と呼ばれるメソッドを開発した。展示物の修復からトレーサビリティ、管理・保存・情報まですべてのノウハウをデジタル化してeMuseumというソフトバンクで世界中に発信していく。いつ・どこで・誰が・どんな情報を必要としているのか。ネットで配信された情報は誰でもアクセス可能で、それをこの美術館の目玉でもある教育と結びつけようとしている。まさに次世代のニューアーカイブ・システムだ。
ケ・ブランリはシラク大統領が11年前から取り組んできた文化プロジェクトのひとつだ。国家予算の1%を文化に費やすフランスでは、今でも政治と文化は切り離すことはできない。第五共和制の歴代の大統領たちは7年間という長い任期を自分たちの足跡を歴史に残すことに情熱をかけた。モダンアートの蒐集家として知られていたポンピドゥーは70年代に当時としては画期的な地域参加型のポンピドゥーセンターを建てて、文化を市民の憩いの場所に据えた。ジスカールデスタンはオルセー美術館を、ミッテランはグランルーヴル計画の名の下に、16年間の歳月をかけて壮大なルーヴル美術館の修復に執念をかけた。
こうした大統領の肝いりプロジェクトの背景は、フランス独自の文化省、すなわち文化大臣の存在なくしては語れない。
かつてドゴールは戦後の混沌とした時代にインフラ整備の必要性からパリの都市計画を打ち出し、パリを世界で一番美しい文化意識の高い街にしようとした。当時、民間人だった作家のアンドレ・マルローを文化大臣に起用して文化の重要性を唱えた。“文化は国の偉大なる財産である”、そんな言葉どおりに文化大臣の地位を他のどんな大臣よりも高いものと位置づけて国家の象徴にした。そんなドゴールの思想はフランス国民にも素直に受け入れられ、こうしてフランスの文化大国としての基礎が生まれたのである。
ケ・ブランリもまたシラクの悲願でもあった。もともと東洋の古美術に造詣の深い彼は大統領を2期務めるという幸運にも恵まれたが、世界中の民族・文明を紹介する美術館の建設を政治的立場からも切実に望んでいた。在任中、一時期、保守と革新の連立政権が樹立され、当時の文化大臣は既存の建物でも充分に文化は伝えられると主張して新しい建物建設には猛反対した。しかし大統領とは政治的立場を異にする首相自らが大統領の真意を汲んで「かつて植民地の拡大を図ったフランスが、今少数派民族に敬意を払うことは発展途上国の人たちに対する大統領の政治的配慮」と建設を続行させた。こうして紆余曲折を経ながらも、ケ・ブランリはやっと日の目を見ることができたのである。
世界の美術館を取り巻く環境は変貌を遂げている。もはや美術館は知識を吸収するための啓蒙の場所ではなく、もっと市民が自由に参加できるフォーラムの場へと変わりつつある。ケ・ブランリもまた、そんな市民参加型の美術館として家族連れや恋人同士、友達、そして自分たちのルーツを発見し、誇りに満ちた自信を取り戻した人たちの笑顔でにぎわっている。


ソトコト・・・ロハスピープルのための快適生活マガジン。 
●「SOTOKOTO」は、アフリカのバンツ一族の言葉で「木の下」のこと。「木の下には叡智が宿る」という意味を込めて誌名としました。ソトコトは完全リサイクルマガジン。再生紙とエコインクを全面使用し、表紙は環境に優しく再生可能な「TECHNOF」加工です。


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